未来を予想する8つの方法

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メルミライでは「未来をみるメディア」というコンセプトの通り、専門家や先駆者たちの話を聞いて、未来を考えている。ときには、話を聞くだけではなく編集者自身がそれに挑み、未来の肌触りを感じる。スマートコネクトを家に設置し、女子大生が使っているアプリを活用し、仮想通貨の投資では時に損をする(Mt.Goxのゴックスもきちんと経験した)。

ただ、未来を感じることはできても、予想することは容易ではない。1990年代に今のGoogleやAmazonの存在を予想することは難しかった。ブラウザの主戦場がNetscapeから、Internet Explorer、Firefox、Chromeと移り変わることを想像できなかった。生きているうちに東京オリンピックを体験できるとは想像していなかった。

とはいえ未来を予想する方法がないわけではない。そこで、今回は「未来を考える方法」について考えてみたい。

メルカリのプロダクト戦略室とは

まず、なぜ私がこのような未来に関する記事を書いているかというと、私の所属するチーム自体が未来を考える部署だからだ。プロダクト戦略室というチームで、メルミライの運営をすると同時に、市場分析や競合調査、ユーザアンケートなどを行いながら、今後の世界を予想する(以下、参考)。

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テクノロジー産業は日進月歩で動きがあり、また、グローバルで大きな変化が起こっている。そのため、未来を予想しながら、向かっている道が正しいか理解することが肝要である。スマートフォンの登場によってインターネットのランドスケープが変わったように、今後もブロックチェーンやXR、バイオハック、量子テクノロジー、あるいはまだ見ぬテクノロジーやプロダクトによってインターネットは変わり続け、生活や事業もそれに影響を受ける。そのためWebリサーチや書籍、論文、特許、データの解析、レポート、ヒアリング、カンファレンス参加、現地訪問といったあらゆる方法を通じて未来を想像していく。

このプロダクト戦略室に所属する私自身は、昔から「物事の未来を考えてしまう」という癖があった。

たとえば「日本は今後どうなっていくのだろう」という疑問が長じて、大学時代は、200年後の国際社会を予想する研究を行っていた。国家の3要素である「領土・国民・主権」の定義も変わるだろうと考えていた。インターネットや航空券の廉価化によって場所の意味が希薄化する今後は、「領土」が不要になる世界がくると。そして、いつか領土のない国家が生まれるに違いない。そのような未来を考えていた。

今回はそのような未来を考える方法に関して、いくつかの方法を共有したい。

未来を考える方法

一次関数の先にある未来

未来とはいえ、「予想できる未来」も存在する。たとえば、今の延長線上にある未来だ。二次関数的な不確実な動きに表される未来ではなく、いまの状況を延長するとそのまま見える世界。

たとえば、地球温暖化がそうだ。過去、30年ほど上昇している世界の平均気温は今後もあがり続けるだろう。大きく下がるということは考えにくい。EC化率もそうだ。いま、すでに多くのお店がEC化しているが、インターネットユーザーとニーズの増加に伴い、さらにEC化は促進されるだろう。

あるいは、ネットワーク。今後、5Gがくるというのは各社が取り組み具現化されつつある未来だ。同時に、IoT化がすすみ、各種のデバイスなどがネットワークに繋がり情報を発信していくというのもおおよそは正しい未来だろう。これらの大きな流れを見れば、その先にある未来は、予想がつくものもある。たとえば、今よりも多くの情報量をリアルタイムでさばけることになる。そう考えると、それらを活用した事業などが生まれるだろう。車には今まで以上に交通に必要な情報が集積されるため、店への移動や交通渋滞の回避が今まで以上に精度高く実現できるようになる。発信・受信をする情報端末としてのモビリティが誕生することになる。

特にテクノロジー産業やインフラに関する事業者などは、今後の事業計画を出していることが多い。それらの計画から未来は考えやすい。たとえば、かつての「半導体の集積密度は18~24カ月で倍増する」というムーアの法則から今後のパソコン性能の輪郭を予想することはできただろう。各キャリアのインフラ計画から通信速度の向上は予想できるものだっただろう。

過去に、とあるサービスの海外戦略を検討したことがあった。その時に参考になったのは、シスコなどが出していた各国のネットワークの計画だった。そのサービスはパケットを消費するので、そのようなネットワークの計画が重要だったのだ。それらのデータを元に各国の参入タイミングを検討した。

そのような予想の活用先は、テクノロジー分野に限らない。以前、高校生の私はある統計データを見かけた。日本の各種データを記したものだ。そこには、日本の少子高齢化が記されていた。それを鑑みるに、今後、日本の元気はなくなる。それならばまずは他の国の勢いも見てみたい。そのため、私は、アメリカに留学した。勢いのまま、留学をしたため、健康サンダルでNYの空港に降り立つはめになったけれど。こうして1つの統計データによって私はアメリカに足を運ぶことになった。

とはいえ、間違えた予測もある。「これだけ英語を学ぶ人が多いのだから、今後、英語ができるだけでは差別化できなくなる」と思い、他の言語を学ぶことにした。中国に留学し、アラビア語を2年、フランス語を1年勉強した。特にスペイン語は3年もかけてしっかり勉強した。スペインの人口を考えると、今後の重要性がもっと高まると思ったのだ。ただ、その予想は外れた。スペイン語の重要性がそこまであがらなかっだ。スペイン語圏の人に「なぜスペイン語の人口は多いのに経済はそんなに伸びないのだ」と聞いたら「シエスタが大事だからだ」と言われた。未来予測には、多くの要素を踏まえて考える必要があるという示唆を得た。

人の心理から考える未来

人が求めることは大きく変わらない。たとえば、「幸せになりたい」という人の願いは今後1000年たっても変わらないだろう。あるいは「ものは複雑よりも簡単の方がいい」「人に嫌われるよりも好かれるほうがいい」ということは多少の例外はあれば、総体としては、正しい。

このような人の心理をベースにして、未来を予測することができる。たとえば、ECサイトでものを買う時に「自分が探しているものがすぐに見つかる方が良い」ということは自明だ。さらに演繹すると「自分にあった結果がかえってくるとよい」というのも正しそうだ。そう考えると、「各種のサービスがパーソナライズ化していく」というのは、大きな流れとして不可逆に存在する。

実際、ファッションでいえば、アメリカでは、Stitch Fixのような洋服のパーソナライズサービスを多くのユーザが利用している。あるいは、データビジネスでは、その人の行動履歴を元に、広告や表示する情報を最適化している。

ケヴィン・ケリー氏の著作〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則 では、このような大きな流れを12種類、紹介している。そのうちの1つとして、「シェアリング」などはイメージしやすい未来だ。日本でも、車はカーシェアのユーザが増え、空いている部屋はシェアにまわす人がでてきている。特に日本では可処分所得が減っていくことに対して、「生きるのに必要な費用は少ない方がいい」と考えるようになり、それを実現する「シェア」を人は活用する。もちろんシェアをしない人も存在するけれど、多くの産業では、シェアの取り組みは進んでいくだろう。

あるいは、昨今では「モノが少ない方がいい」というミニマリズムのトレンドが大きくなってきており、「検索するよりも、プッシュで情報が送られる方が楽だ」といったトレンドもある。他にも、RSSリーダーの凋落を見る限り「自分で情報を探すよりも、ソーシャルで友人から教えてもらう方がいい」というトレンドが見受けられる。

出会い系サービスのコミュニケーション手段も人の心理に合わせて「よりシンプルに」となっているようだ。従来のYahoo!お見合い(旧:縁結び)のようなメッセージでやりとりするものから、PairsTinderのようなLike(スワイプ)で簡単にコミュニケーションを開始できるものが流行り、今は、Dineのような「メッセージのやりとりは最小限にして、とりあえず食事に行く」というサービスまで出てきている。今後は「リアルで会うよりもバーチャルで会うほうが楽」ということを考えると、動画などを活用したものも増えるかもしれない。

また、昨今、話題になった「ズボラ旅」やZOZOTOWNの「おまかせ定期便」などのようなサービスは「旅行の計画や服選ぶは人に任せたい」という人の心理に沿ったサービスだったといえる。なお、「人は人と繋がりたい」という欲を考えると、ゲーム実況アプリの「Mirrativ」の利用やツイキャスでのメイクする様子を動画配信する理由はわかるが、それならば、「読書の共有サービス」もあって良いと思うが、多くの人が使っているという話はまだ聞いたことはない。人は読書している時は人とは繋がりたくないものかもしれない。

「群衆の知恵」から考える未来

アンケートなどによる定量調査から世の中の動きを可視化し、そこから未来を予測することもできる。つまり多くの人が考えていることから予測する未来だ。

ただ、「今、何をしていますか」というアンケートだけでは、今の状況しか知ることができない。「このようなものがあれば使いますか」という未来に対する問いかけをすることにより、「そのようなものを使うニーズがどれくらいあるか」ということを推測する。

とはいえ、人は見えていないものはイメージしにくいのも事実で、よく言われるように、スマートフォンが登場する前に「スマートフォンのようなものがあったら使いますか」という問いで、現状のような半数以上の人が「使う」とは回答しないかもしれない。「パソコンみたいに使える携帯」という表現で、スマートフォンの価値を想像することは難しいのだ。

そのためIT産業などでは、プロダクトイメージをモックなどにして、できる限り実際のプロダクトに近いものを作り上げ、その感想を聞く。実際、メルカリでも多くのユーザインタビューをモックを元に行い、受容性調査を行う。

最近の気づきとしては、若い世代こそチャットUIを好む。当たり前といえば、当たり前だが、とはいえ、「自分がそのUIにピンとこない」場合は、その現実を直視しにくい。たとえば10年前では、PCをメインに使う人にとって「携帯でインターネットをするなんて速度も遅いし入力インターフェイスもよくないし使いにくい」という感覚だったものが、実際に多くのヒアリングをすると、若い世代では携帯をメインに使っていたということがわかっただろう。

私がコンサルティング会社に勤めていた時も、このような大規模アンケートやヒアリングは数多く行った。時には10年以上先の未来を見据えたユーザヒアリングも行った。その時に想定していた未来のいくつかが今は現実になっている。

またアンケートで未来のことを聞くだけでなく、嗜好の変化を探ることにも役立つ。アンケートで、その時のスナップショットを取るだけでなく、経年で同じアンケートをすることで、変化を見ることができる。たとえば、ある時に「服のレンタルをしたことがある」という人が10%で、1年後に同じアンケートをして、その割合が13%になっている時に、その3%の増分が意味を持つ。来年はさらに増えている可能性が高い。そうして未来を少しずつ予想していく。

株価の動きも群衆の知恵といえるだろう。特定の産業の株価が実際の価値よりも高ければ、多くの人がその産業が伸びると考えるということになる。もちろん、ブロックチェーンの昨年のバブルにもあるように、加熱した期待も存在するが、とはいえ、1つの未来を予想する手段である。

なお、あるテーマの最新動向を常にウォッチするには、ツールの活用も重要だ。たとえば、RSSリーダの「inoreader」では、キーワードを登録しておくと、自分が購読しているサイトから、そのページだけを抜き出してくれる。あるいは、Googleアラートでキーワードを登録しておくと、毎日、そのキーワードを含むニュースをメールで教えてくれる。私の場合は「日本でも 流行」というキーワードを登録しており、各メディアがピックアップした「今後、日本で流行りそうなもの」を教えてくれている。蛇足ながら、それによって「オルチャンメイク」「シリシリダンス」「スラックライン」「#InMyFeelingsChallenge」「チーズティー」「パン飲み」などのトレンドが引っかかった。なお、Googleアラート以外にも、NewsPicksやニュースパスでのキーワードのフォローもテーマによっては活用できる。

先行者から知る未来

すでに先行している事例からは、より実現される確度が高い未来をみることができる。たとえば、インターネットの先進国で受け入れられているインターネットサービスは、日本でも受け入れられることが多い。これはしばらく前によく使われた「タイムマシン経営」と表現され、時差をもって海外のサービスが日本で開始された。もっとも、世界中、情報がリアルタイムに共有される今では、従来よりも、タイムラグが減り、そのモデルも難しくなってきているけれど。

他にも先行事業者の特許情報や採用情報を元に、彼らのみている未来を参考にすることもできる。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)などのテクノロジー業界の巨人たちが挑む未来は新しい地平を開くものが多い。

Googleに関して、過去にこのような取り組みをした。多くの検索単語の検索結果を定期的にウォッチしていたある時、今までとは違う検索結果の動きがあった。本来の検索結果ならば、上位にこないようなページが上にきていた。そうして、そのページがあがった理由を推定する。そこにGoogleの検索の哲学が見える。そこから仮説を検証するために、同様のページの動きを調べ、もしそれが想定どおりの動きをしている場合、仮説が補強される。そうしてGoogle検索の考えを理解すると、今後の検索アルゴリズムが垣間見える。

他にもこういう経験をした。2003年ごろ、アメリカでは、FriendsterやOrkutのようなSNSが流行り、その後、日本ではmixiやGREEがうまれた。「ソーシャルネットワーキングは今後流行るだろう」と感じ、ソーシャルネットワーキングの情報を発信するブログを始めたところ、予想が当たり、ソーシャルネットワーキングの本を7冊書く機会をいただいた。socialnetworking.jp、socialmedia.jpのドメインを取れたのも副次的な産物だ。ドメインは商標など他社の権利を侵害していなければ、早いもの勝ちの仕組みになっている。

ただ、2007年に始めたクラウドソーシングの事業は、閉じることになった。時流としては、確かにクラウドソーシングの産業は大きくなったが、その中で時流にのって成功をするには、また別のノウハウがいる。未来を予想できたからといって、その未来を作れるかどうかは別の問題だ。

先駆者の考えを知る手段として、特許や採用情報、組織から見える未来は多い。たとえば、Amazonの配送などの特許は、今後、彼らが考えている未来が透けて見える。あるいは、Facebookは先日、メッセンジャーのチーフエンジニアをブロックチェーンの研究グループにアサインした。そこから、Facebookのブロックチェーンの取り組み具合が見える。メルカリでも、研究開発組織のR4Dのメンバーやブロックチェーンのメンバーは各社の特許やホワイトペーパーを丁寧にウォッチしている。なお、蛇足ながら、私の父は寝る前に特許技術をよく読んでいた。彼もそこから未来を考えていたのかもしれない。そんなものを寝る前に読んで安らかな睡眠が得られるか子供ながらに心配だったが。

参考になる先行者は企業に限らない。テクノロジー業界だと今後のトレンドを分析している人たちは数多くいる。たとえば、元アナリストのメアリー・ミーカー氏のインターネットレポートは毎年公開され、もはや風物詩となり、多くの人たちが読んでいる。他にも調査会社のガートナーはハイプ・サイクルというテクノロジーのトレンドを定期的に紹介してくれている。Twitterでも多くの業界で情報を発信してくれる専門家が多いので、その人たちをフォローしておくのは常套の手段だ。

身の回りの人からも未来が見えることもある。たとえば、アーリーアダプターと呼ばれる「流行り物好き」の人たちが利用するサービスは、今後、広がることも多い。

昨今では、Zenlyというリアルタイムの位置情報共有サービスが高校生の間で人気だ。「今、自分がいる場所」をかなり細かい粒度でつながっている友人に共有する。これは普通の感覚でいえば「自分がいまいる位置を共有するなんて怖い」という感覚だが、実際に受け入れられていることをみると、今後、他の世代でも、そのようなことに抵抗がなくなってくる可能性もある。

IT業界に限らない。ファッション業界では2年後のトレンドを事前に決めている。国際流行色委員会がインターカラーという流行色を決め、それから各ブランドはそれらを参考にしながら服を作る。

このプロダクト戦略チームでも、IT以外の各専門家の人からお話を聞くということは定期的に行っている。そこでは本やWebリサーチから得られない生の情報が数多くある。また、過去の職場でも「最新の情報を知りたいなら、飲みに行くのが良い」というアドバイスで元に、足繁く飲みにでかけていたこともある。本やWebの情報でさえも時には古い。その業界の最前線で戦っている人たちから聞くアドバイスが、千金に値することも少なくない。実際、ネット業界で活躍している人たちから、メッセンジャーでさっと質問をいただくことも少なくない。感度の高い人は、そうして効率的にスピーディに情報を集めている。やはり情報は現場に転がっている。

過去から未来を予想する

過去の歴史から未来を予測することも重要な手段だ。ベタながら「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉にあるように。

たとえば、「失敗の本質」という本では、日本の過去の戦争でなぜ失敗したかという切り口を紹介している。その日本的な組織で起こった事象は、今の現代でも起こる可能性が高いとみなされ、今でも多くの人がこの本を手に取る。

不動産でも同じ考えを使って未来を考えることができる。たとえば、今、日本の不動産は熱量が高く、高値で取引されていると言われる。もし、これが下り坂になれば、どのような未来がくるか。その場合、過去の不動産の価格の歴史をみれば良い。たとえば、リーマンショック後の不動産の価格を見れば、今後、不動産の値段が下がっても、ボトムはそのへんではないか、と予想がつくことができる。もちろん、それ以上に下がる可能性はあるとしても、1つの補助線として過去のデータは参考になる。

ただ「過去にこれが成功したから未来も成功する」という未来予測はなかなか難しい。過去の成功は様々な要因によって成功していることが多いからだ。特にタイミングを筆頭とするその時の環境や社会背景によって成功したものが数多く存在する。USでは近所の人とのコミュニケーションをベースにしたNextdoorが多くのユーザを集めているが、日本では1995年からコンセプトは近い「ご近所さんを探せ!」は存在する。Foursuare(swam)の前にも日本ではガラケーをベースにした位置情報共有サービスはぱらぱらと存在した。マネーフォワードZaimのずっと前の2006年にガイアックスは「散財.com」というソーシャル家計簿サイトを運営していた。これらはタイミングだけの問題ではないが、必ずしも「コンセプト」が正しかったからとはいって、ユーザが使うかどうかは別の問題だ。

ただ、過去の失敗の理由は、避けるべき反面教師として参考になることも多い。たとえば、インターネット産業自体も、多くのそのような過去が存在する。Windows95がでてから、もう20年以上で、それだけの死屍累々と過去が積み上げられている。

たとえば、

  • Googleはソーシャルが得意ではない
  • コミュニティは古参が新しい人を排除しがちなので新陳代謝が重要
  • マーケットプレイス事業は、デマンド側とサプライ側の双方のユーザを同時に立ち上げないといけないため大変(デマンドがサプライになるモデルが強い)
  • コミュニティがある所、ネカマと出会い系、スパマーは常に存在する
  • ユーザは自分が使っているサービスを簡単には乗り換えない(例:レシピサイト、検索エンジン)
  • CGMで書き込む人は5%くらい
  • サービスローンチ時に大手メディアに取り上げられても、その時のインパクトは一過性でその後にデスバレーが待っている
  • 人はあまりたくさんのアプリ/サービスを使わない
  • 人は移動時間と昼休み、寝る前にアプリを使う
  • アダルトはテクノロジーを牽引する

など、ある種のインターネット版マーフィーの法則のようなものがある。歴史から学べることは多い。

今はインターネットに20年以上の過去が蓄積されているので、過去の記事を参考にすることも有益だ。私の場合は、はてなブックマークで10年分の6万以上の記事をタグづけしているので、あるテーマについて考える時は、そのタグに紐付いた記事を一気に読むことが多い。たとえば、Facebookだけで1000以上、クラウドソーシングで500以上、socialmediaで1300以上の記事が紐付けられており、それらに目を通すことで、ざっと過去を遡ることができる(ちなみにはてなブックマークをIFTTTにつないでEvernoteにインポートすれば、過去記事検索も容易だ)。

占いから見る未来

占いから見る未来といっても、占い師に聞くわけでもなく、タロットカードをめくるわけではない。占いであるような「ほんとにそんなこと起こるのか」という未来の仮説から入る予測である。つまり、非線形の未来を予想するには「今は想像できない世界」を想像するのが1つの手だ。

方法の1つとして、実際に占いのように、カードや何かを使って未来を考えてみることができる。カードをA群とB群に分け、A群には産業や事業を書く。たとえば「ファッション」「ホテル」「賭博」「農業」などなど。B群には社会トレンドを書く。たとえば「シェア」「レンタル」「リアルタイム」「IoT」「グローバル化」「パーソナライズ」などなど。そして、AとBから1枚づつカードを出して、その掛け合わせで世界を考える。たとえば「自動車産業」と「廉価化」ならば、今後、10万円で買える車が誕生した世界を想像し、それが起こった場合の社会インパクトを考えてみる。あるいは、「占い」と「ビッグデータ」ならば、その人のプロフィールや過去の意思決定などのデータを元にした「その人の未来」という占い事業が考えられる。「広告」と「音声入力」ならば、町中にマイクとサイネージをおいて、その場で話されている話題に応じた広告をディスプレイに表示する広告事業が思いつくかもしれない。いわばブレストだが、無理やり制限をかすことによって出てくる切り口もある。

このような思考の制限を外したブレスト対話は未来を考えるのに適している。メルカリでも、合宿などを通じ、職場以外の場所で今後の話をすることが多い。普段と違う場所にいることによって思考の制限が外れ、よりクリエイティブな補助線を生み出すことができる。メルカリのCPOの濱田は「モノを持たない世界を作れないか」という発言をしたことがあるのだが、そのような「ifもしも」の未来から事業アイデアが生まれることもある。

あるいは、「本当にそんなこと起こるのか」という発想をサイエンスフィクションからアイデアをもらってもいい。アニメの「電脳コイル」では、電脳メガネというウェアラブルコンピューターのような未来を予言しているし、映画の「マイノリティ・レポート」では、タブレットの未来が見える。このようなSFを占いの水晶として未来を想像することもできる。

私自身、大学時代に200年後の世界を想像する1つのキーワードである「ブランド国家論」を学び始めたのは、フォーリン・アフェアーズという外交の専門誌に掲載された「The Rise of the Brand State(ブランド国家の台頭)」という1つの記事からだった。その論文の趣旨は「経済力がない国はブランド化しないと生き残れない」というもので、その論文に感銘を受けた私は、その学問に足を踏み入れた。ブランドバッグを選ぶように、自分が税金を払う国を決めることができる社会を仮定して、研究をすすめた。

このようにして、あえて「起こり得なさそう」な未来を想定することで、そこから未来の糸口がみえる。

認知バイアスを取り除き確率で考える未来

確実に訪れる未来も存在する。摂理に則った未来だ。たとえば、半年後は冬がくる。いまが暑いからといって半年後はもっと暑いということにはならない。

このようなことは「当たり前」で意味がないという人もいるかもしれない。しかし、意外と多くの人はそのような未来を見ていないことも多い。

たとえばインフルエンザの予防注射を受けているだろうか。インフルエンザは多いと1000万人がかかる。そう考えると10%弱の確率で自分も感染する。これは未来だ。しかし、それでも予防注射は受けない人が多い。

「明日も昨日のような日がくる」というのも思い込みである。たとえば内閣府の予測によると、2065年には、日本の国民2.6人に1人が65歳以上の高齢者になると予測される。その社会はきっと今より大きく違うものだろう。そう考えると、たとえ明日とはいえ、昨日よりも1つ高齢化が進んだ社会だ。日本で今、子供を生むということは、1つ少子高齢化を改善すると同時に、そのような高齢化する社会に子供を送り出すということでもある。

また内閣府の推定によると、2100年には、人口は5000万人になる。いまの半分以下だ。戦後の日本のように「ほっておいてもお客さんが増える」という時代は終わり、今後も、他国展開や構造が変わらないと「お客さんが減っていく中でパイを取り合う」ということにもなる。

「自分は死ぬ」というのも99%の精度で正しい事実だ。また平均余命というデータを使えば、自分がおおよそあと何年生きれるかの期待値がでるため、そこから逆算して人生に必要な費用もおおよそ予想できる。しかし、その計算をしている人は少ない。

事業計画もおおよその確率をもとに作ることができる。今までの売上データから、今後3年はこれくらいになるだろうという予測はたてられる。あるいは新規事業の成功確率を織り込んで、それを事業計画に反映する。これも確率による未来の予測である。

生産計画もそうだ。食品メーカーなどは、データ保有企業から各種のデータや天気予報のデータを購入し、今後の作物の収穫高や売れ筋を予測し、生産量コントロールを行うこともある。

卑近な例でも事例がある。大学生からすると、「社会人になれば、海外旅行にいきにくくなるだろう」というのは予想できる未来の1つだろう。普通のサラリーマンになれば、長期休みはGWか夏休み、年末にしかとれない。サラリーマンにならない未来もあるが、確率で考えれば、サラリーマンになる確率が高い。そう考えた私は時間のある大学時代に海外を回った。約80カ国。おかげで、今は休みだからといって、海外にいきたい欲望もない。

終わりに

今回、未来を考える方法をいくつか共有したが「未来を考えてどうするの」という指摘もあるだろう。

ただ、良いこともある。株であれば、未来予測があたれば儲かるし、自分のキャリアパスで正しい道を選びやすくなるかもしれない。予防医療に関心がでるかもしれない。英語の学校に行き始めるかもしれない。

そのような大きな行動だけではなく、小さな行動でも日常に彩りを与えることがある。たとえば「これが流行るかも」と思ったものを写真に取り、ハッシュタグをつけインスタグラムに投稿してみる。あなたが投稿した時は、そのハッシュタグに200しかなかった写真が1ヶ月後は20000になっているかもしれない。そうすると毎日、そのタグを追いかけるのが楽しくなる。食べログでレビューのない店にレビューをして、その後の増え方を楽しむのもいいかもしれない。これらの活動をしても、何も利益はない。ただ、楽しい。自分が想像した未来が現実になっていくということは、想像するよりも楽しい。たとえば、今だと、Googleのローカルガイドに精を出すのも面白い。

未来に関する好きなエピソードがある。「恋人までの距離」という映画の主人公とヒロインの出会いの場面だ。あるバスに主人公が乗り込むとヒロインを見かける。そこで、主人公はヒロインに話しかける。そこの口説き文句が未来を使ったものだった。主人公はヒロインにこういう。「何十年後かの未来を想像してみて。あなたは結婚している。ただ昔のように夫への愛はない。あなたはこれまで出会った男性のことを思い返す。もしそのうちの1人と結婚していたならどうなっていたのだろう、と。その1人が僕だ。僕は未来からのタイムトラベルで、いま、未来にあなたが何を失ったかを確かめてみよう」と。未来を想像することで、いまのあなたのアクションが変わるかもしれない。

ニューヨーク大学の心理学者のハル・エルスナー・ハーシュフィールドさんの研究によると、将来の自分をよりイメージできれば、現在の選択肢が変わるということを明らかにした。退職後の自分のアバターを見た人と見ていない人に分け、特定のお金を何に割り当てるかを考えてもらった。結果、自分の老後をみた人は、2倍以上のお金を退職金口座に割り当てた。また、ドイツのハンブルクエッペンドルフ大学医療センターの脳神経学の分析によっても、似た結果がでている。これらを鑑みるに、未来を想像することは、今の行動を変えることに繋がる。当たり前かもしれないが、この差分がでたということはすなわち「未来を考えない」という人が多いことの証左でもある。

最後に未来を予想する8つ目の方法を。このメディアのキーフレーズにもなっている通り、「未来を予想する最善の方法は自分で作ることである」ということで、そのような未来を考えることが好きな人は、是非、ご連絡いただければと。一緒に未来を考えましょう、作りましょう。

※私がいまここにいるのは、メルカリがかなり先の未来や社会を考えていた点に惹かれたのも大きな理由の1つです。

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  • Written by 原田和英(Mercari, Inc.)
  • Edit by 原田和英(Mercari, Inc.)
  • Illustted by 田中慎一(Mercari, Inc.)