Airbnbを月商10万の企業からユニコーン企業に変えた考え方

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皆さんは「デザインシンキング」というキーワードをご存知でしょうか。

昨今、デザインシンキングはプロダクト開発の重要な考え方として、注目を浴びています。

そこで今回は、First Round Reviewに掲載された「How Design Thinking Transformed Airbnb from a Failing Startup to a Billion Dollar Business」という記事をご紹介させてください。こちらでは、Airbnbに影響を与えたデザインシンキングが記されています。どのようにその考え方はAirbnbを変えたのか、またAirbnbはどのようにその考え方を浸透させているのか。

※First Round Reviewの許諾を得て翻訳・公開をしています(一部意訳)。

目次

日本語全文

2009年、Airbnbは倒産の危機に瀕していた。多くのスタートアップがそうであるように、ローンチ当初の2009年は世間から見向きもされなかったのである。

会社の収益は停滞していて、1週間に200ドル程だった。サンフランシスコ在住の3人の創立者で分配すれば、成長していない企業から多額のマイナスが生まれている状況だった。

ご存知の通り、ベンチャー投資家は右肩上がりで成長する企業に投資をしたいと考えている。しかし共同創立者のジョー・ゲビアによれば、Airbnbの売上はどこまでも平らな線が続いていくだけだった。共同設立者たちは、クレジットカードの利用額限界までカードを使うことを強いられていた。

スケールしないことにも挑戦する価値あり

その頃、AirbnbはY Combinatorの一部だった。ある昼過ぎ、同チームは、Airbnbに登録されているニューヨーク市内の掲載物件一覧(リスティング)に目を走らせていた。その場にはポール・グレアムも居た。

※ Y Combinatorとは
アメリカの有名なベンチャーキャピタル

※ ポール・グレアムとは
Y Combinatorの創始者

創業者たちは、自分たちのサービスの何が間違っているのか、どうして成長できないのかを必死に見つけようとしていた。そして登録内容が表示されているページを見た後、ゲビアがあることに気付いたのだ。

「この40の掲載物件には共通点がある。写真が良くない。自分のカメラを使っているか、適当なサイトから引用しているのだろう。自分が泊まる部屋がどんな部屋かも分からないのに金を払おうという利用者が居るわけもない。」

この問題にグレアムはある解決方法を提案したが、それはスケーラブルでもテクニカルでもない方法だった。

その解決方法とは、実際にニューヨークに行き、カメラを借り、貸し出し物件を掲載しているユーザーに直接会って 、その部屋の写真をよりプロフェッショナルで美しく撮ることというものだった。

3人はすぐにニューヨークに飛び、いかにも素人が撮った写真を美しい写真にアップグレードしていった。この決断をするためのデータがあったわけではなかったが、とにかく行動を起こしたのだ。

成果が現れたのは1週間後。写真をアップグレードすることにより、1週間の収益は倍の400ドルになった(それまでは200ドルだった)。これは立ち上げから8ヶ月、Airbnbが経験した初めての財務改善だった。彼らは、この経験を通じて何かを掴んだと確信したのだ。

これが同社にとってのターニングポイントになった。ゲビアによると、当初の彼らは『何か行動を起こすなら、それはスケーラブル(小規模にも大規模にも同様に対応できるようなもの)でなければならない』と考えていたという。ようやくスケーラブルでない解決方法もありだと彼ら自身が思うようになったのは、辛酸を嘗めきった後のことだった。

「当時の私たちは、問題に直面したらスケーラブルな方法で解決しなければいけない、というシリコンバレー的な考えをもっていた。それがコードの魅力ですからね。

コードを1行書くだけで、ある1人の顧客が持つ問題にも、1万人や1,000万人が持つ問題にも対応できるのが理想だという考え方です。会社を立ち上げてから最初の1年、私たちはコンピュータの画面に向き合って、コードを書くことで問題を解決しようとしていました。

私たちは、『シリコンバレースタイルで問題を解決しなければならない』という一種の強迫概念に支配されていたのです。ポール・グラハムとY Combinatorで出会い、スケーラブルでないソリューションも視野に入れて良いということが分かり、事業の向かう先が完全に変わったのです」

『デザイナーはより良い製品を作るために患者にならなければならない』とは?

このゲビアの一連の経験から分かるのは、『コードだけでは顧客が持つ全ての問題を解決することはできない』ということだ。コンピュータは確かにパワフルだ。しかし、ソフトウェアでは解決できない問題も確かに存在する。

シリコンバレーの起業家たちは、キーボードを操る自分たちの姿に酔いがちだ。しかし、現実世界で顧客と会うことは、彼らが持つ問題を紐解き、賢いソリューションを考案する上でおおよそ常にベストな方法なのである。

ゲビアはさらに、自身が考える理想的な顧客開発は、昔通っていたデザイン学校での経験によって形成されたと語る。

「ある時、医療デバイスを設計する課題に取り組む際に、その製品が実際に使われている現場に足を運びました。どういう人が関わっているのか、その製品を使うユーザーや医師、看護師、患者などあらゆる人と言葉を交わすことで、どこに設置するのが良いだろうかということが分かりました。自分が使うならどうかと考え、実際にその場に身を置いて、患者の気持ちになることで、ようやく『なるほど』とひらめき、何かを得ることができたのです。しかしこれは面倒だと気付き、何かもっと良い方法があるはずだと、私は思うようになりました。」

写真をアップグレードすることによって改善を得られたという経験により、ゲビアは『実際に患者になってみる』ことを、デザインチームのコアバリューとすることにした。

そして『常に患者の立場になって考える』ことは、瞬く間に新たなチームメンバーにも共有された。

「Airbnbに新しく加わる社員の皆には、1週目か2週目に、現地視察やちょっとした旅行に行っていただきます。そして何を見たか、感じたかということを書類で報告してもらいます。いくつか質問を用意して、それから彼らの回答と報告を社内全体で共有します。このプロセスを通じて、私たちが「相手の立場になって考える」ことを重要視していると社内全体で理解してもらうことはとても大切です。旅費については会社が負担します。」

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Airbnbはデータを重要視する企業だが、データに振り回されるような経営は行っていない。統計やデータに脊髄反射的に反応するのではなく、よりクリエイティブな仮説を立てたり、変化を起こしてみたり、それにより事業がどのような影響を受けるかを確認し、そのプロセスを繰り返すのである。

ゲビアは言う。

「あるデータについてスケーリングが現実的でないというだけでは、そのデータが無駄とは限りません。何かアイデアがあるなら実行してみることが大切です。今のAirbnbには、スケーラブルでないアイデアでも実行するに値するという社風があります。世界に飛び出し、行き先でちょっと何かを試して、分かったことを持って帰って皆で共有するということを重要視しています」

Airbnbのそれぞれのチームメンバーは、新たな機能などについて『これが良いのでは』という考えを持っている。そして、その新たな機能を追加することによって有意義なリターンがあるかどうかを測るのだ。もし新機能が利益創出につながるなら、より多くの人員をそちらに向ける。

こうして従業員は、会社を代表して生産性の高いある程度測定されたリスクを取ることを推奨されることとなり、それが新たな機能開発の出発点となるのである。こうしてAirbnbはより機敏に舵を取り、新たな機会を継続的に見つけ出すことができるのだ。

「私たちは、何か一筋の光のようなものを見つけられるような環境を作り出したいと考えています。そしてそこにダイナマイトを投げ込み、爆発させ、他に無いような何か大きなものを生み出したいのです」

初日に学ぶのはAirbnbの社員としての在り方

オンボーディングの一環として、新入社員は出社初日にAirbnbに付け足す新機能を提案するように薦められる。そうすることにより、新入社員は社内の文化にいち早く溶け込めることができ、これにより『優れたアイデアはどこからも湧き出る』という会社としての考え方も示される。

こうしたアプローチによる成果物は、時に意外な形でもたらされることもある。例えば、Airbnbのあるデザイナーは、『星を付ける』機能の再設計という、一見すると些細なタスクを任された。元々のAirbnbでは、ユーザーは星を付けることででウィッシュリストへの追加ができたのだ。

当時のことを、ゲビアはこう振り返る。

「仕事を任せた新しいデザイナーが戻ってきて、『分かりましたよ』と言ったのです。『分かったとはどういうことだ? まだ丸1日も立っていないぞ』と言うと、『私が思うに、この星は、無機質なアイコンです。Airbnbはむしろ「つながり」が重要なので、星よりハートのアイコンのほうが親和性が高いと思うので、変えましょう。』と彼は答えたのです。それを聞いた私は、『なるほど、面白そうだ』と言い、早速取り入れてユーザーの行動を追跡することにしたのです。」

星からハートにアイコンを変えただけで、エンゲージメントは30%増加した。このように、新人に挑戦をさせることというのは非常に有意義なことであると言える。

最後に

スタートアップ企業でプロダクトを作るというのはとても大変だ。常に突っ走っている状態でプロダクトをいち早く世に送り出す必要がある。ゲビアは、この辛い状況の中でも新しいアイディアを考えられるように、より大きく、かつ野心的に考えることをいつもチームに説いている。

「誰かが私に新たな提案をしにくる際、私はいつも大きく考えてアイデアを膨らませています。ここで私が一番強調したいことは「大きく考える」ことです。もし私にアイデアをピッチするのであれば、何であれ、型にはまらずに発想を100倍に膨らませてからきてください。」

メルミライより

今回のお話は、デザインシンキングの可能性や意味合いが理解できる物語です。メルカリも、デザインシンキングに取り組んでいます。

そこで今回はデザインシンキングのワークショップを開催したいと思います。デザインシンキングの取り組みに関して、ご興味をもってくださる方は、ぜひ、以下よりお申込みくださればと思います。

mercari.connpass.com

Writer_原田和英(Mercari, Inc.)

Editors_原田和英、加藤太助(Mercari, Inc.)