中国で「決済革命」の次は「OMO」だ

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「中国のインターネットは進んでいる」と表現されることも多い。そこで、中国にて中国のインターネット動向を追い続けるメルペイの家田に、中国の今を聞いた。そこで見えてきたのは「オフラインとの連携」や「BATの存在感」だった。そのような中国に対して日本のインターネット企業はどう対峙すべきか。

目次

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家田昇悟(Ieda Shogo)
株式会社メルペイ マーケティンググループ 兼 中国インターネット研究所所長
大学在学中から中国のインターネットの動向を追い続け、FBグループやブログで最新情報を発信。 大学卒業後メルカリに入社。ID連携や振込機能改善のプロジェクトに従事後、中国での調査活動を経て、メルペイのマーケティングを担当。

中国のインターネットは「進んでいる」のか

ー現状の中国のインターネット事情はどのようなものでしょうか。「進んでいる」と表現されることもあります。

「進んでいる」という表現よりは、「オンラインとオフラインのサービス連携の世界ができている」という方が正しいかもしれません。

中国の都市ではスマートフォン端末が十分に普及しています。そして、そのスマートフォンを軸に、オフラインとのサービス連携が進められているという世界が、今の中国のインターネットの根幹に当たる部分です。

ARやVR、AIスピーカーのようなものが様々存在していても、ハードウェアが普及しなければ世の中には広がりません。中国でも同じことがいえます。スマートフォンが十分に普及したから、その上にオフラインと連携したビジネスが広がっています。

ースマートフォンが普及してから、どのようにしてオフライン連携が始まったのでしょうか

スマートフォンが普及すると、決済サービスが使われる土台が整いました。WeChatPay(微信支付:ウィーチャットペイ)により、ユーザー同士でお金をやりとりできる機能を作り、WeChatPay上にお金が入る仕組みを作り、またお年玉を使った大規模なイベントなども活用することで、WeChatPayと銀行口座の接続ユーザーを短期間で急増させました。

Tencent(騰訊:テンセント)とAlibaba(阿里巴巴集團:アリババ)はフードデリバリーや配車サービスに巨額の資金を投じ、接触頻度の高いサービスを通じて自社決済サービスを使ってもらいモバイルペイメントの使用を習慣化させました。また、スターバックスなどの大手チェーン店と提携しながら、WeChatPayやAlipayをオフライン店舗で使えるよう整備していきました。同時に、小さな商店などもWeChatPayやAlipayを導入し、キャッシュアウト先が増えていきました。

上海ですと、2016年時点でほとんどのお店でWeChatPayもしくはAlipayで支払いができ、2017年には現金を持たずに生活できるようになったと思います。

モバイルペイメントとQRコードの普及により、オフラインの各種サービスへの支払いも簡単にできるようになりました。例えば、レンタル自転車やレンタル充電器、無人コンビニ、レンタルベビーカーなどオフライン事業とのサービス連携が花開いていったのです。

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ーなぜ中国ではそのようにスマートフォンの普及が早かったのですか

よく言われることですが、PCの普及の前に、中国ではXiaomi(小米科技:シャオミ)のような価格の安いAndroid携帯も普及してきました。当時で1万円ほどの値段でスマートフォンが買えたのです。

中国では、スマートフォンの普及が始まってからそれを後押しするように政府がインターネットサービスの普及を促進する施策を行い、また、TencentやAlibabaのような大企業が一気にスマホ事業に力を入れることで巨額の資金がスマートフォンの周辺事業に集まり、様々な事業者の参入を促しました。このように様々な要素が積み重なって、今の中国のスマホ大国を実現したのだと思います。

ー政府による支援とはどのようなものだったのでしょうか

中国は2015年から「インターネットプラス」というあらゆる産業の中でインターネットの活用を促進していく方針を、明確に国として打ち出しました。そして、インターネットを使って産業を変えていくための費用を政府が積極的に出しています。

例えば深センのインキュベーション施設にも補助金が出されていて、ばらつきはあるものの1年間で最大で8,500万円を提供しているケースもあります。ある意味バブルではあるものの、そのような支援もあり、起業しやすい環境を中国政府が整えています。

憶測ですが、政府の狙いは就職率の安定化にあるのでは、と思っています。政府は大学卒業後の就職率を維持したいと考えているのではないでしょうか。しかしながら、中国の経済成長率は低くなってきており、就職は難しくなっています。そこで中国政府は起業した人が大きい産業を作って、そちらで就職口を作るというような方法で就職率の改善を図っているように思えます。いわば政府はインターネットの事業促進支援を、雇用政策の一貫として打ち出しているのではないかと。

また、決済について今までは中国でも「第三者決済機関のオフラインでの銀行カード清算市場参入はだめだ」という規制がありました。しかし、2013年7月に政府がその規制を緩和したことで、非金融機関でもWeChatやAlipayのように企業が銀行と直接接続をしてオフラインでの決済業務を出来るようになりました。

※第三者決済とは
複数の銀行で口座を開設することにより、自身の口座体系で銀聯(ぎんれん)などの清算機関を経由せず、消費者から小売店への資金清算と決済を行うこと

これは政府(人民銀行)の規制緩和無しには出来なかったものです。その観点では、政府が適切に伝統企業以外の業界促進を促していて、適切に規制緩和しているといえます。

中国は基本的に「何か問題が起こったあとに規制をする」という発想です。例えば直近の例でいえば、フードデリバリー事業者が実店舗を持たず、許可証も得ずに業務を行っていたことが社会問題になりました。2018年になってフードデリバリーサービスを対象とした規定が施行されました。またシェア自転車のMobike(摩拜单车:モバイク)も、早急に普及させた後で「国と民間企業が一緒になって駐輪ポートを作りましょう」や「適切に停めましょう」といった動きになっています。

中国政府は、先に事業を走らせて、社会問題になってしまった際に整備すれば良いというスタンスです。起業する側からするとグレーゾーンに進み続けるようなものですが、イノベーションは起きやすい状況ともいえるでしょう。

TencentとAlibabaの圧倒的な存在感

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ー中国政府の支援などもあり中国では大きなインターネット産業ができました。その特徴をお聞きかせください

中国が他の国と違って一番特異な点は、BAT(Baidu、Alibaba、Tencentの3社)が存在している点です。

2017年に中国に121社のユニコーン企業があり、51%がBATと何かしらの資本関係があるというデータがありました。直近で例えると大型の配車サービスのDidi Chuxing(滴滴出行:ディディチューシン)は、TencentとAlibabaの両社が資本に入っています。バイクシェアに関してもofo(小黄車:オフォ)にはAlibaba、MobikeにはTencentが出資しています。

このBATがバックにいなければ資本が追いつかない状態です。また、出資を受けると、WeChatのポータルの中に導線をおいてもらい、送客支援を受ける可能性もあります。現地のVCの人からも「次のラウンドでBATの出資に繋げられるかが勝負」という話を聞きました。

ーBATは自社でサービスを作る自前主義ではなく、出資をするという方針なのでしょうか

中国のインターネット産業はダイナミックに動いているので、もはやBATで全部はできない状態です。そのため、出資も活用していますね。

LINEと異なる点はその点かもしれません。LINEは2014年、フードデリバリー事業「LINE WOW」を単独で開始しましたが、テンセントは美団点評(メイチュアン・ディアンピン)と、アリババは餓了麼(ウーラマ)に出資し、一気に事業を立ち上げました(なお、LINEは、2017年に改めて出前館と提携しLINEデリマとしてフードデリバリー事業を開始)。

配車サービスも同様です。AlibabaはKuaidi Dache(快的打車:クァイディダーチャー)に出資し、TencentはDidi Dache(嘀嘀打車:ディーディーダーチャー)に出資し、事業を一気に立ち上げました。

ー世界では、AGFAと呼ばれる、AmazonやGoogle、Facebook、Appleなどがインターネット業界の巨人たちとして存在しています。AGFAに比べて中国のBATは追いかけているのでしょうか。先に行っているのでしょうか

昨今、欧米でも中国でも、インターネット企業がオフラインに進出していくというトレンドがあります。その点で比較した場合、Amazonがスーパーのホールフーズを買収したのは2017年の8月です。同様な動きとして、AlibabaがHemaXiansheng(盒马鮮生:ヘマーセンシェン)というスーパーに出資したのが2016年の3月なんですよね。Alibabaの方がAmazonよりも先にスーパーに着手しています。

このような動きを見ると「テクノロジーの進化として進んでいる」かどうかはわかりませんが「オフラインを見据えてインターネット業界をどう発展させて行くのか」という面では、中国の方が先に進んでいるとも言えるでしょう。

そして、次はAIといった世界がやってくるかと思いますが、その点でもデータ量の多い中国はアドバンテージがあるように思えます。AIの一番大事な点が「どれだけデータを取ってくるか」という点に集約していくのであれば、個人情報を取りやすく、かつ2018年の現在人口が13億人いる中国の方が強いのではないかなと。このAI市場でも中国が先に進むかもしれません。

ーBAT以外で気になる動きのプレーヤーはいますか

Ping An Insurance(中国平安保险:ピンアン)グループという保険会社が伸びています。保険をベースに日常生活のありとあらゆる事業に参入してきています。

そのため、従来の「BAT」という表現から、最近は「TAP」と呼ばれることもあります。つまり、存在感が弱くなったBaiduの代わりにPing An Insuranceを足して「TAP」だそうです。

また、次世代のBATとして、TMD(Toutiao、Meituan-Dianping、Didi Chuxingの3社)と呼ぶこともありますね。

Toutiao(今日頭条:トゥティアオ)は「Toutiao」というニュースアプリケーション。「Meituan-Dianping(美団-大衆点評:メイチュアン・ディアンピン)」は最初は、グルーポンのような共同購入サービスから始まり、今では、デリバリーやホテル領域まで参入しています。「Didi Chuxing(滴滴出行:ディディチューシン)」は、Kuaidi DacheとDidi Dacheが合併してできた配車サービスですね。

オフラインとの連携が進む世界

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ー中国のインターネット業界の特徴である「オフラインとオンラインのサービス連携」に関して詳しく教えてください

例えば、Alibabaが出資しているHemaXianshengというスーパーが代表的な動きです。ここでは、オフラインとオンラインの施策を組み合わせて、新しい体験を実現しています。上海では15店舗ほど、既に開店しています。

彼らのコンセプトはシンプルで「まずスーパーに来て何か買ってもらい良い体験をしてもらう。そして、オンラインでも使ってもらう」というものです。

まず大きな違いは衛生面です。中国のスーパー(特に、街なかにある野菜市場)は日本に比べて不衛生なお店が多いのですが、HemaXianshengはきれいです。スーパーで食品を調理して食べることもできます。この点で他のスーパーにはない魅力があります。

その上に、このスーパーではインターネットを活用した新しい体験を作っています。例えば、商品にQRコードをつけて、商品の詳細をその場で見ることができます。アプリでセールの情報も見ることができます。また、アプリからその日の商品を見て、購入し、配送をしてもらうことができます。3キロ以内であれば30分以内に届けてくれるのです。

スーパーへの訪問は週末だけでもいいのです。平日は、アプリで注文してもらって、週末だけスーパーにきてロイヤリティをあげてもらう。このような、オンラインとオフラインを組み合わせた設計が見事です。

F2というレストラン業態へ進出、アダルト商品を扱いはじめコンビニ化など、生鮮食品に留まらずオフラインの全ての領域に進出しようとしている野心があるのではないでしょうか。

ーいわゆる「O2O」とは少し異なるようですね

そうです。日本でいえば、O2Oという表現がありますが、中国では、OMOという標語を最近は聞きます。その意味合いとしては、今までの「オンラインからオフラインへ送客(O2O)」という意味合いから、今は「オンラインとオフラインの融合(Online merge Offline)」という状態になっています。オンラインとオフラインを相互に行き来し、境目がなくなっている状況とでもいえるかもしれません。

※O2Oとは
Online to Offlineの略。オンライン上から、オフライン(お店など)へのアクションを促進する動き

ある中国の企業がこのような話をしていました。日本企業に対して事業説明をすると「オンラインで何か施策はしていますか」と聞かれるのですが、中国企業としてはオンライン・オフラインの区別はないので、「そのような質問をされても困る」と答えたそうです。

ーAlibabaのスーパーなどの施策に対して、TencentはどのようなOMOの取り組みをしているのでしょうか?

Tencentを代表するサービスがチャットアプリのWeChatです。このWeChatがここ1年で新しく導入しているものにミニプログラムがあります。

QRコードをスキャンすれば、アプリをインストールすることなくミニプログラムが起動します。オフラインとオンラインを結びつけるツールとして、バスの時刻表からバッテリー充電器のアプリまで様々なサービスをWeChat上で使えることができます。これをWeChatのOMO施策の基幹としていく、とみています。

www.youtube.com

WeChatのタイムラインは、Facebookのように「転職しました」といった自己PR的な事にも使われますし、Twitterのようなつぶやきも、インスタグラムのような画像投稿もあります。日本のFacebook、Twitter、Instagramをあわせたやりとりが、WeChatのタイムラインに集まっています。

このあたりのWeChatの凄さは日本にはまだ伝わっていないように思えます。WeChatはあらゆる行動の起点になっています。

Alibabaは送客導線をWeChatほど強く持っていないので、その点ではWeChatの方がAlibabaより強いとも言えます。滞在時間でいってもAlibabaより上なので。

ーBATの一角であるBaidu(百度:バイドゥ)はどのような状況でしょうか

Baiduはこの2年間、2社にくらべて展開が遅れていると言われています。実際に、検索で圧倒的な存在感だったBaiduですが、最近はWeChatに押されています。WeChatは購読アカウントという情報発信アカウントに力を入れ、WeChat内でコンテンツが完結するよう、WeChat内での検索機能にも力を入れています。

ただし、それに対してBaiduも改善を行っており、最近大きな動きがありました。検索のアプリの下タブの1つがショートムービーのコンテンツになりました。以前の「検索サイト」からの脱却で、「検索させない」という方針、すなわちBaiduが能動的に情報を流すという方向にシフトしています。その動きに合わせてニュースを流すタブもでてきています。今後、パーソナライズされた検索や動画などのリッチなメディアにユーザがシフトするという世界を見据えたBaiduの動きです。

またBaiduは、自動運転にも力を入れるようです。自動車を全て自動化することで移動における可処分時間を増やすことが出来ます。その後にそこに生まれる広告空間を取ることで、そこに巨大な広告市場が生まれます、そこでBaiduが一気に潮目を変えるといった可能性はあるかと思います。

中国は住むのに便利な街なのか

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ーテクノロジーにより中国は日本よりも住みやすいのでしょうか

中国で一番便利だと感じるのは、スマートフォンだけで生きていける点です。特に、WeChatとAlipayさえあればすべて完結します。

財布がない、カードもいらないという状態です。しかも今までは交通カードは持っていたのですが、今はQRコードでも改札を通れるようになりました。

現金を使う機会はほとんどなく、たまにタクシーの運転手が導入していないときに使うくらいです。家賃もWeChatを使って個人間送金で済ませています。水道水などの公共料金もAlipayで払えます。「Alipay上から地元の水道水や電気代を払える」というのは、Alipayが最初に行った施策ですね。

ミニプログラムの普及はまだこれからの部分もありますが「QRコードさえあれば全部のものがオンライン上で利用できる」という世界観に近づいていっています。

ーQRコードを通じたサービス活用はすでに進んでいるのでしょうか

まだ一部ですが事例はでてきています。例えば、マクドナルドなどはミニプログラムを通じて事前決済をして、後は注文した商品を受け取りにいくだけという「待たなくていい」体験ができるようになっています。

ー「スマートフォンだけで生きていける」という場所は、都会だけでしょうか?

自分は上海、北京には2017年にそれぞれ1ヶ月以上滞在しましたが、スマホだけで生活がほぼ完結できました。成都など内陸の都市でもスマートフォンが普及しているので、QR決済は大体のところで使えます。WeChatPayのユーザー数は2017年12月時点で8億人を超えており、もっと内陸の都市や田舎でも使えるようになっているはずです。

ーサービスを使う場合、日本ではKYCが重要ですが、中国ではオンラインでのID活用も進んでいるのでしょうか

※KYCとは
Know Your Customerの略で、本人確認のこと。例えば、銀行に口座を開く場合に、免許証などで顧客確認を行うことを指す

進んでいます。前提として、中国では身分証が厳格に管理されています。例えば、大陸が大きいので政府は誰が移動しているかを把握するため、長距離列車に乗るときは身分証で席を取るのが必須でした。今はそれがオンライン化されているので、サービスの本人確認が一発で済みます。その情報がスマートフォンのSimカードの携帯番号と紐付いていて、さらに、その番号と銀行口座が紐付いているので、全てオンラインで完結しています。

病院に関しても、Alibabaが変えようとしていますね。病院といえば「診察を受けて診断書と処方箋をもらって薬局に持っていって、また待って」という風に時間がかかりますが、それをオンラインで行えるようにして、「準備ができたらAlipay上で通知が来るように」といったストレスのない世界を作ろうとしています。診察も予約できますし、医者も選べるようになります。現状は、まだ一部の病院で入っているという程度ですが。

ー今後の十年後の中国は、TencentやAlibabaが更に事業を伸ばし、そしてオフライン領域への進出がさらに進んでいるという世界でしょうか

そうですね。Alibabaが購入を軸に資産管理のようなお金にまつわる所をどんどん統合していくでしょう。WeChatはオフラインとオンラインで繋がる所を中心にどんどんコミュニケーションを取っていっていくのではないかと思います。

中国以外の国での展開

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ーお話を聞いていると、今後のインターネット地図は「US一強」から「USと中国」という構図に変わる可能性がありますね

そうですね。さらにいえば、人口という面ではアフリカに中国が参入していますので、アフリカで中国の存在感が増せば、欧米諸国VS中国・アフリカの構図ができあがるかもしれません。そのときに日本を含む他のアジアは双方と距離を保ち、バランスを取る存在といったところでしょうか。

ー中国はアフリカでも存在感はあるのでしょうか

インターネットに関しては、東南アジアでの中国の進出具合と比べると、まだまだ「存在感がある」というほどではないと思います。ただ、中国政府は建設や土木といったインフラ事業への投資は多くしていますし、じきにインターネット産業での存在感も増すのではないでしょうか。

ー欧米の企業で、中国に参入している大きな事業者はいますか

eBayは2001年前後に現地の企業を買収する形で参入しましたが、Alibabaに負けました。2009年にはFacebookが、2010年にはGoogleが撤退しています。このように多くの企業は過去に撤退しています。

ー逆に中国企業が中国以外で存在感を出している国はありますか?

Musical.lyなど最近は中国発で海外進出するサービスは増えていますが、FacebookやGoogleのような存在感のあるインターネットサービスだと欧米ではありませんね。端末では、Xiaomiがロシアでうまくいっていますが。

出資は積極的にしていて、東南アジアはもう完全に出資戦略です。

ー日本は中国のインターネットサービスとどう向き合えば良いでしょうか。参入チャンスはありますか

中国のインターネット業界は日本に比べると進んでいます。そう考えると、簡単に日本のサービスを持ち込んでも勝つのは難しいでしょう。もちろん、特定のサービスやアプリ単位では、日本の事業者の方が進んでいる場合もあるので、個別で見るとチャンスはあると思います。ただ、全体感でいえば、中国の方が資本力もあり、多くのPDCAが回されているので、日本の事業者が参入するのは大変だと思います。

ーゲームなどのコンテンツ産業はいかがでしょうか

以前までは日本に優位性がありましたが、いまはそこまでの優位性はない印象です。実際、今は、中国のゲームが日本に入ってきています。例えば、NetEase(網易:ネットイース)の「荒野行動」は日本でも大人気ですよね。

ー日本と中国のインターネット産業における環境の違いはありますか?

一つの要因は人です。インターネットサービスも根幹は人が支えるものです。フードデリバリーでも配達するのも人ですし、SNS系も人がたくさんいればスケールします。そう考えると、やはり人がたくさんいればいるほどお金が集まってきて、そこに対して良いデザイナーやエンジニアが集まると思います。またスケールを実現するための人もいます。

また、所得格差も違う点です。例えば、日本ではフードデリバリー事業をする場合に、日本は所得格差もあまり無いので、「安い賃金でも配達をやるよ」という人が少ないのです。例えば日本の田舎と東京の年収の差は大きくても2分の1とか3分の1かもしれません。対して、上海と田舎の州の一人あたりの平均GDPは六倍や七倍といった格差があります。そのような賃金の低い州から都心に無数に出稼ぎが出てきます。その人たちが中国のオフライン事業を支えていたりします。

このような人の多さと所得格差によって、中国の方が事業がやりやすいといえるでしょう。

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日本はどう中国を捉えるべきか

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ーいまの中国の勢いを見ていると、今後、中国資本のサービスが日本で存在感を増すという可能性もありそうです

そうですね。実際、この1年で日本における中国プレーヤーの参入は増えています。例えば、シェアバイクの「ofo」と「Mobike」。また、中国版のVoicyとも言われる音声プラットフォームの「Ximalaya(喜马拉雅:シマラヤ)」は、「Himalaya」として日本展開をしています。

また、日本でも使われている「TopBuzz」という動画視聴アプリケーションはToutiaoの傘下です。Toutiaoは「musical.ly(ミュージカリー)」も買収し、日本展開を本格的にしています。また、日本の若者の間で使われているショートムービーアプリ「Tik Tok(ティックトック)」もToutiao傘下なので、ショートムービー系アプリケーションはToutiaoが日本のシェアを掌握しているといっても過言ではありません。

あとはライブコマースの「17Live(イチナナライブ)」や「Live.me(ライブミー)」も日本でもユーザを集めています。ライブミーも中国ですし、ゲームデベロパーのCheetah Mobileのアプリ「ピアノタイル2」なども日本でユーザを集めています。

ー反対に、今後、日本の企業がBATに買収されていくというのも有りえるでしょうか

有りえる話だと思います。もしBATが日本に進出するとなれば、買収は積極的に考えてきます。そして、Alibabaが直近で買収したのがフードデリバリーのウーラマですが、一兆円で買収しました。こう考えると、そのときの金額感は日本企業が出しにくい規模感ともいえます。

他の国をみると、Alibabaは「Paytm(ペイティーエム)」というインドのAlipayのようなサービスに出資していますし、インドネシアの大手ECの「Tokopedia(トコペディア)」にはTencentが出資しています。同じくインドネシアのバイクタクシー予約サービスの「Gojek(ゴジェック)」もTencentですよね。このように、東南アジアはもう基本的にAlibaba対Tencentのような形になっています。

ーでは、買収ではなく、中国企業の日本の企業への出資はあるのでしょうか

たまに耳にします。日本のスタートアップで中国企業の出資の打診を受けた話はいくつか耳にしています。復星グループという中国最大のプライベートファンドも日本に担当者がいて、出資先を探されています。

ー日本の事業を中国に持っていくのではなく、中国で事業を0から立ち上げるということも増えてきそうです

そうですね。すでに友人でも何人か現地で起業している者がおります。小売向けのデータ分析事業や動画メディア、教育事業でサービスを伸ばしており、すでに現地で外部調達もしている企業もあります。国単位でいえば、中国にビハインドしていますが、個人単位で考えれば、中国で起業するのはありえる選択肢です。

ーアメリカで起業するのと中国で起業するのだったらどう違うと思いますか?

ベンチャーキャピタルを筆頭とする現地コミュニティに入りやすいかどうかといった違いはあるのではないでしょうか。サンフランシスコに数年住んで起業している知り合いがいるのですが、シリコンバレーでは人脈をつくるのが難しいという話を聞きました。明らかに階級があり、とあるVCのイベントではOBを呼ぶのですが「成功した企業」だけ呼んで、そうでない企業は呼ばれないということもあるそうです。暗黙のランクがあり、成功した人しか参加できないカンファレンスもあります。

対して中国では、私の場合、友人ベースで色々な企業を紹介してくれました。先日も時価総額1,000億円を超えている企業のCEOに軽く繋いで頂いたり。そういう意味では、中国のコミュニティの方がアメリカよりも入りやすいのではないかと思っております。ただ、私はサンフランシスコに住んだことがないので、推測の域はでませんが。

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ーメルカリとしては中国をどう捉えていますか

メルペイに入社した方は基本的に全員、会社負担で中国(上海)にいっていただきます。日本のメディアや書籍でも中国の決済の進化は説明されていることも多いのですが、読むだけと実際に体験するとでは大きな違いがあると考えています。そして、それは経営陣だけに限らず、エンジニアもプロデューサも、マーケターも、人事も全員がその経験をすることで同じ目線を持つことができます。また色々な角度からの気付きもあります。

そのような観点から、中国出張だけに限らず、Mercari Tech Research という制度を設け、会社負担で各国の最新のトピックを調査することも推奨しています。

※Mercari Tech Researchとは
サービスの企画・開発に関わる社員を支援するための制度で、海外調査の出張費や研究費を会社が提供している

今後もメルカリは、中国、アメリカ、世界のインターネットサービスの動きを理解しながら、事業を推進していきたいと思います!

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