自動運転はいつ実現されるか?その時に考えなければいけないこと

f:id:mermirai:20180509184232j:plain

ここ数年、自動運転の話題が増えてきました。実証実験は日本を始め世界各国で始まっています。

そこで今回のテーマは「自動運転」。

気になる「自動運転はいつ実現するのか?」という問いについて考えたいと思います。

そちらに関して、米国の有名なベンチャーキャピタルAndreessen HorowitzのパートナーであるBenedict Evans氏による「Steps to autonomy」という記事が非常にわかりやすく解説してくださっているので、翻訳の上、ご紹介します。

※Benedict Evans氏の許諾を得て翻訳・公開をしています(一部意訳)。

以下、日本語全文

自動車の自動走行について議論になりやすいのは、そのレベル(程度)だ。

例えばレベル1は速度管理や車間制御が可能な程度だとする。レベル2では、いくつかのセンサーによって前の車がスピードを落としたら減速を試みたり、特定のレーンに沿って走るということができる。だがまだ両手はハンドルを握っていなければならない。

レベル3では自分の代わりに自動運転システムに運転させることができるが、運転席に座る人は常に運転を替われるようにしておかなければならない。

レベル4になると、ある種の状況下では完全に運転を自動化することができるが、場合によっては自動化できないこともある。

そしてレベル5になると『運転手』は完全に不必要となり、従ってハンドルも不要になる。

f:id:mermirai:20180509184302p:plain

↑自動運転のレベル分けをした図
 ※記事下部で、この図の見方を解説しています

この図は少々単純過ぎると思われるかもしれないが、一度、これを現状に当てはめて考えてみよう。

プロトタイプの自動運転車を用いて、「安全な運転」を試験するために実証実験を行った際にわかったことがある。それは、自動運転ができるかどうかは、街ごとに全く異なるということだった。

フェニックスはサンフランシスコよりも自動運転が簡単で、サンフランシスコはネパールやモスクワよりも簡単だ。この違いは、それぞれの都市や国による違いにかぎらず、それぞれの都市の一部分で比較しても違いがあることがわかる。都市中心部よりも高速道路の方が簡単で、都市中心部は都市近郊部と比べて簡単であることもあるし、難しいこともある。

当然といえば当然だが、そう考えると、完全な自動運転車は段階的に実現されると考えられる。

あらゆる場所で自動運転ができるより先に、まずは限定的な自動運転機能が搭載される車が出てくるだろう。その方がずっと安全性が得られるし、事業としての利点もある。通常、レベル5の完璧な自動運転車をいきなり作り始めて長距離を運転させようとなどは考えない。そして、だからこそ、仮にある車についてレベル4の自動運転が可能だとしたとしても、『どこでそれが可能なのか』ということを意識しなければならない。レベル4の『対応範囲』というのが『この国のほとんどの場所』を指す可能性も、あると言えばある。しかし多くの場合、それは『ある特定の場所』程度だろう。「レベル3としてはこの場所が運転できる」、そして「レベル2としてこの場所が運転できる」といった情報が示され、時には1度のドライブで、これらのレベルの場所をすべて運転することになるかもしれない。あなたが走行ルートを地図にいれると「このルートは、レベル5の自動運転が可能です」といったことを教えてくれるようになるだろう。

多くの企業は、「高速道路は街中の道よりもシンプルだ」という前提に立って長距離自動運転を実現しようとしている。事実、長距離トラックの走行距離の8割〜9割は高速道路でもある。つまり、高速道路の間だけでも自動運転が可能になることを目指すというのは、とても価値があることなのだ。そうしたトラックは、高速道路上ではレベル4かレベル5で自動運転を、街中ではレベル2かレベル3で自動運転ができるようになる。

逆に例えば中規模の町があったとして、町の中心部には日中は自動運転車しか入れない場合はどうか。その区域に入れるのは、自動運転が可能なバスや車、タクシーだけということになる。こうした自動運転タクシーがこの区域を決して出ないということになれば、それは車と言うよりもむしろゴルフカートのようなものではないだろうか。こうした車が、田舎道ではできなくともケンブリッジの中心部なら補助無しで(つまり人間の運転手を必要とせず)運転するとして、ケンブリッジの中心部を決して離れないというのなら、それはどれほどのレベルの自動化を得ていると言えるのだろうか。

では次に、「清掃員に自動でついてくることができるが、車庫に戻るときには手動運転が必要なゴミ回収トラック」について考えてみたい。これは自動運転と言えるのだろうか。それとも、高度な車間制御でしかないのか。

言ってしまえば定義の問題ではあるが、ここまで考えると次の問題に行き当たる。

『自動運転車はいつ実現するのか』という質問に対して答えることは簡単だが、その『いつ』というのは『どこで』や『何が』という問題に関わっているということだ。だからこそ、時間をかけて様々な場所に様々なモデルをより多く展開していくことが必要になってくる。

言うならば、このような試行錯誤が最終形を形作るのだ。この記事で紹介したレベル分けの図は、私たちが1999年や2000年に『モバイルインターネット』の未来について話し合っていたことを思い出させる。もしも1998年、通信キャリアの人たちが一堂に会して、メーカーやサプライヤーに、『マルチメディア端末』がどのようなものかを伝え、スペックを定義し、10年後に向けて「それにマッチする商品を作れ」と言うことができていたらどうだっただろうかと想像してもらいたい。

現実はそうではなかった。

むしろ、それらの製品を作り出す「プロセス」そのものが最終的な未来となった。私たちは色々な道を方針を試し、上手くいったものを徹底的に追求した(そして最終的に通信キャリアは居場所を失い、「サプライヤー」が全てを一新した)。私たちは事前に結論ありきで始めてそれを形にしたのではなかった。

自動運転車のレベル4やレベル5の話をするとき、結果が既に想定されているように感じられることがあるのだが、結果は、このような試行錯誤のプロセスによってもたらされるものであるはずだ。

この多面的かつ斬新的な、プロセスベースのモデルにおいては、『運転手は運転に目を光らせる代わりに本を読んでも良いか』や『運転せずに後部座席で寝ても良いか』というような質問と向き合うことになる。今のところ、完全に運転を任せることができるモデルは限られている。その車が自動運転車であるかどうかはあなたの判断だ。移動中に自動運転モードから、手動運転に移行しなければならない場合の問題は、『人間は、高速で走行する車の運転を急に替われと言われても難しい』ということだ。事実、レベル1の方がレベル2や3よりも安全だと言う人も居る。レベル1なら、運転をしているのが自分自身だというのが常に明らか、自動部分は自分が見落としたブレーキの補助くらいだけだからだ。

そう考えると運転手と車がどうコミュニケーションするか、という点を考えていかないといけない。『これはレベル5の自動走行が可能なルートです。ゆっくりお休みください』や『これから1時間は自動走行致します。自動走行終了5分前にアラートで通知をします』といったコミュニケーションが、どのように行われるべきか考えなくてはいけないのだ。また、「自動運転車は、自動運転できないのエリアに、自動で入ってしまうことは避けれるだろうか」「自動運転機能の代わりに運転する際にはどうしたら良いのか」。そのようなことを考えていかないといけない。

自動化や自律化に関連して昨今多く言われる問題と同様、こうした問題に対する答えはまだまだ少ないのが現状だ。2000年に2018年のスマートフォン市場がどのようなものになっているかを予測するようなものである。

ただここで重要なのは、例えば2023年や2027年になって自動走行車が市場に現れるようになったとしても、その商品には『レベル4の安全性』などというタグは付いていないだろう。ただ「初!XXに自動運転が対応」といった多種多様な「初」が付いた自動運転車が市場に並ぶだけだ。


以下、参考

[図の見方]

各自動運転の基準を取りまとめたもので、左に行くほど『運転手』が必要(レベル0)で、右に行くほど完全に自動化(レベル5)されています。

  • レベル0:運転手は常に、運転に必要なことを自分で行わなければならない。システムの介入はなく、警告発信程度に留まる。/また、運転手は運転中、目をそらすことができない。
  • レベル1:システムにより、ハンドル操作または加速・減速のいずれかの操作を担当させることができるが、運転手はシステムにより担当されていない方(ハンドル操作か加速・原則)は行わなくてはならない。/また、運転手は常に運転中、目をそらすことができず、必要に応じてハンドル操作と加速・減速の両方について自分がすぐにコントロールできるようにしておかねばならない。
  • レベル2:特定の利用事例においては、システムがハンドル操作と加速・減速の両方を担当できる。/しかし、運転手は常に運転中、目をそらすことができず、必要に応じてハンドル操作と加速・減速の両方について自分がすぐにコントロールできるようにしておかねばならない。
  • レベル3:特定の状況下においては、システムがハンドル操作と加速・減速の両方を担当できる。また、システム自身がその限界を察知し、運転手に通知することができる。/この時、運転手は運転中に常に運転状況を確認し続けなければいけないわけではないが、システムの要求に応じて、特定の間には自身で運転ができるようにしておかねばならない。
  • レベル4:特定の状況下においては、運転上の全てのタスクをシステムに担当させることができる。/この利用事例においては、運転のために運転手は不要となり、運転状況の確認やバックアップとして乗車することも不要となる。
  • レベル5:いかなる場合であっても、運転上の全てのタスクをシステムに担当させることができる。/運転手は完全に不要となる。

f:id:mermirai:20180511002429p:plain

  • *本プラットフォームで用いられる分類
  • **その他分類との対応は完璧ではない

※本文で用いられている「autonomous cars」は直訳的には自律運転車ですが、日本では馴染みの薄い表現ですので、「自動運転車」と表現しています。